2019/07/04

ゴールを目指す

楽器による奏者の性格の違い…みたいなことを論じてるブログや記事なんかをときどき見かけるけど、これは本当にあると思う。例えばピアノ奏者。ボクのつたない観察によれば、ピアノ奏者には、感性は繊細であるにもかかわらず、大らかで細かいことにコダワらない人が多い(もちろん例外もあるけど)。

このことにはちゃんとした根拠がある。ご存知の方も多いと思うが、ごく一部の例外を除けば、ピアニストっていうのは自分が所有するピアノを生涯お客様の前で弾くことはないヒトたちだ。昨日はコンサートホールのスタインウェイ、今夜は場末のジャズバーの半壊れアップライト、明日は結婚式場の最新式エレクトーン…みたいに、プロ/アマ関係なくその場に用意された未知の楽器にその都度対処しなきゃならない。だから、細かいことにコダワってたら、とてもじゃないがやってられないのだ(繰り返すが例外もある)。

身近な例で言えば、at!のピアノ奏者あっちゃんも細かいことにはコダワらない、良く言えば大らか、分かりやすく言えば大雑把なタイプだ。5歳からピアノを弾き始め、専門の学校を出て、長年ピアノやエレクトーンの指導をしつつ、さまざまな音楽活動を続けてきたピアニストならではの典型的鍵盤奏者体質と言える。ただし、本人の名誉のために付け加えれば、これは演奏とは直接関係なくて、つまり、段取りとか譜面の扱いとか、そういう行動等が大らかなのであって、演奏が大雑把とかそういうことではないので誤解無きよう(笑)。

で、サックス奏者はどうなのかと聞かれれば、これはもう細かいことにムダにこだわる超粘着体質が多い、と言わねばならない。そして、これにもピアノ奏者の場合と同様、立派な根拠がある。サックス(正式名:サクソフォーン)という楽器は、非常に不安定かつファジーで未完成な楽器。ベルギー人のアドルフ・サックス氏が発明してからたかだか180年(ちなみにピアノは300年以上)と歴史も浅く、いまだオーケストラにも入れてもらえない…という異端の楽器でもある。

サックスの何が不安定で未完成かと言えば、その最たるモノは音程のいい加減さにある。くわえ方や吹き方で音程も音色も変わる。マウスピースやリード(これを振動させて音を出す)等の付属パーツによっても音色は大きく変わる。ゆえに、サックス奏者はその不安定さの改善や理想の音色追求のために、道具にコダワるのだ。そしてこれが粘着体質を生む。コレを使えば音色はもっと良くなるはずだ…という、果てしない道具探しの旅の始まり。

かくして、サックス奏者は息の入れ方、くわえ方、呼吸法のほか、マウスピース、リード、リードの締め金をはじめ、パーツの材質、メッキ等の表面処理、果てはストラップの材質にまでコダワる粘着体質となっていく(もちろん例外もある)。最近では、主要なネジ類をチタン製に換えたり、振動特性を変える塗料を使用する…といったクルマやオーディオなみの改造、チューンナップも増えてきて、演奏そっちのけで盛り上がってるサックス奏者(というよりサックスマニア)もSNS上で頻繁に見かけるようになった。

そんなサックス奏者の体質は、ピアノ奏者のそれに較べると実に対照的。「どんな鍵盤でも勝負したるわ。かかって来いやぁ!」というピアノ奏者に対して、サックス奏者は「オレの楽器が一番だもんね、ペロペロ(舐めまわす音)」というヒトがほとんど。知り合いのサックス奏者の中には愛器と一緒に風呂に入るヒトもいる(ホント)。ま、それは極端な例としても、とにかくピアノ奏者みたいに他人の楽器でライブ…なんてとんでもない! と、これがサックス奏者なのだ。(重ねて言うけど、例外もある)

ボクの場合、ネジ換えたり、管体を金メッキしたり…みたいなことまではやらない(そんな金もないし)けれど、マウスピース探しの旅だけは一向に終着点が見えなかった。しかし、ここへ来てようやくゴールらしきモノが見えてきた。と、いうわけで、次回のライブは、先月やっと出会えたこのちょっと古めのマウスピースで臨むことに。うまくいけば、マウスピース探しの旅が終わるかも知れない…そんなライブになるかも、とワクワクしている♪(知)

Otto Link Tone Master  NY


★★★★★★★★★★★★★★★★★★
at! Summer LIVE @ART FOR THOUGHT

2019年 7月 20日(土)
open 19:00
1st stage 19:30-20:20
2nd stage 20:40-21:30
チャージ:1000円+オーダー

銀座 ART FOR THOUGHT(アートフォーソート)
東京都中央区銀座8-10-4 和孝銀座8丁目ビル1F
TEL:03-6228-5922
http://artforthought.jp

「at!」
内藤知己(ts,ss)
三上敦子(p)
「ゲスト」
岩本勇介(b)

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★